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行事ニュース

2019年度 高校卒業式

本日、午前10時より本校香真館にて第69回 高等学校卒業式が行われました。

2019年度 高校卒業式 式辞

厳しかった冬の寒さも日増しに和らぎ、春の訪れが感じられるようになりました。未来に向かって希望がふくらむこの佳き日に、八田英二総長、理事長をはじめ、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜りますとともに、保護者の皆様のご列席をいただき、ここに2019年度同志社香里高等学校卒業式を挙行できますことを、高いところからではございますが、心より厚く御礼申し上げます。

本日、本校を巣立つ297名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんの卒業を心からお祝い申し上げます。

さて、卒業生の皆さんは、3年間、あるいは6年間、忙しい学校生活の中で、勉強と行事や部活動を両立させながら努力してきました。クラスや部活動の仲間と同じ目標に向かって頑張ったこと、喜びを分かち合ったり、時には壁にぶつかって辛い思いをしたことなど、かけがえのない時間だったのではないでしょうか。今、皆さんの胸中は、きっとすがすがしい満足感に満ち溢れているものと思います。皆さんのこれまでの努力に、心から敬意を表したいと思います。ぜひこれからも、本校で得た仲間とのつながりや思い出を大切にして、新たなステージで大きく羽ばたいてほしいと思っています。

皆さんの輝かしい旅立ちを祝して、聖書の御言葉を通して、はなむけの言葉を贈りたいと思います。先ほど工藤宗教部主任に拝読していただいた聖句は、旧約聖書の出エジプト記15章の「マラの苦い水」という物語です。これは、モーセの一行が自由を求めて、エジプトを脱出して、シュルの荒れ野に向かって進むのですが、3日間、水を得ることが出来ませんでした。そして、ようやく泉のあるマラという所に着きますが、そこの水は苦くて飲むことができませんでした。渇きで苦しむ民の目の前に水があるのに飲むことができない、それは全く水がないよりも、もっと大きな苦しみだったのではないでしょうか。民は不平を言いだします。そこで、モーセが神に祈ると、神は一本の木をお示しになり、それを取って水に投げ込むと、水は甘くなったというお話です。

この聖句は、1889年6月25日、新島先生が亡くなる半年ほど前、同志社英学校の卒業式が行われ、その式辞で新島先生が引用されたものです。新島先生は卒業生に、「諸君が、我が校で学んだキリスト主義をもって社会に出るならば、困難が横たわっている。忍びがたきことだが、諸君は枝を折り、苦水につかるのだ。苦水を甘水、甘い水に変える一本の木であれ」と述べたと記されています。

当時の日本は、大日本帝国憲法が発布され、森有礼文部大臣が暗殺された年でもありました。新島先生は、憲法発布を喜びながらも、親交が深かった森大臣の死に衝撃を受けます。同時に、このような時代だからこそ、「一国を維持するは、決して二三の英雄の力にあらず。実に一国を組織する教育あり、智識あり、品行ある人民の力に拠らざるべからず、これらの人民は一国の良心ともいうべき人々なり」との思いに至り、「自治自立の人民」を養成したいと同志社を創立しました。新島先生は、その同志社を巣立つ卒業生たちに、「君たちが出て行く社会は、苦水しかない荒れ野のようなものだ。しかし真の自由を体得し、良心をもった一本の木として苦水につかりながら、苦味を甘味に変えていく働きをしてほしい」と語ったのです。

今、私たちを取り巻く世界は、少子高齢化が進み、価値観や文化の違いを受け入れることができず、各地で悲惨な紛争やテロが起き、環境破壊による地球温暖化など、様々な課題を抱えています。また、今年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、ますますグローバル化、ボーダレス化が進み、AIやロボットの活用が期待されています。これから皆さんが歩み出そうとしている世界は、変化が激しく、不確実かつ予測困難なものとなっています。ややもすると命の生存をもおびやかしかねない苦水で溢れています。しかし、このような厳しい時代であるからこそ、私は、同志社香里を卒業する皆さんに大きな期待を寄せています。「苦い水を甘い水に変える一本の木」として、本校で培った力を礎に、日本、いや世界で活躍してください。これからの社会は、皆さんに託されています。

最後になりましたが、保護者の皆様にお祝いとお礼を申し上げます。本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。お子様の健やかな成長を願って支えてこられた皆様には、さぞやご苦労も多かったことでしょう。今日の佳き日を迎えられ、立派に成長されたお子様の姿に感慨もひとしおかと存じます。教職員一同、心よりお慶びを申し上げます。今日まで本校にお寄せいただきましたご支援、ご協力に深く感謝を申し上げますとともに、今後とも本校の教育にますますのお力添えを賜りますようお願いを申し上げます。

それでは、卒業生の皆さんの今後のご活躍とご多幸を心からお祈り申し上げ、式辞としいたします。また会う日まで、お元気で、ごきげんよう。

2020年2月22日

同志社香里中学校・高等学校

校長 瀧 英次