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行事ニュース

生命医科学部「香里生のための1日実験セミナー」報告

「脳を見る」

8月21日(月)、同志社大学生命科学部にて、「香里生のための1日実験セミナー」を企画していただいた。ご担当は医生命システム学科の角田伸人先生で、本校受講者は高校生9名であった。

今回は、運動や感覚、さらには記憶などを管理して、動物にとってきわめて重要な器官である「脳を見る」というテーマで行われた。脳はふだん頭骨に覆われているため、直接見ることが困難である。そのため今回は、ラットの脳のスライス標本を染色し、それを観察することになった。

ラットの脳は、前方にある嗅球から後方にある小脳までの距離が約18mm、脳の高さは約8mmであり、プレパラートを作成して、顕微鏡で観察するにはちょうど手頃な大きさの脳である。このスライス標本はすでに作成されており、私たちはそれを手順に従って染色することになった。標本の厚さは、7μ㍍(ヒトの赤血球1個の直径)であり、高級なミクロトームで切られていることがわかった。私たちが提供された標本は、パラフィンで包埋されたものであったが、ラットから脳を取りだしてこの状態にするまでに数日かかっているとのことであった。本校で手短に標本を作成する方法として、液体窒素で凍結する方法を教えてもらったが、スライスするミクロトームの値段を聞いて断念した。

さて、まず私たちがしたことは、標本の張り付いたスライドガラスに名前を書き、パラフィンを溶解して取り去ることであった。そのために、リモネンというレモンに含まれる成分に漬け込む作業を行った。全員のスライドガラスを1つのかごのような容器に立てて入れ、このかごごと、各溶液の入った容器へと移動させていった。最初につけたリモネンの液に5分、その次のリモネンに5分というようにして、3回リモネンに漬け込んで、パラフィンを完全に除去した。その後、リモネンを取り除くために、100%エタノールに5分間、3回漬け込んだ。その後水道の流水で5分間洗浄した。ここまでの作業は、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)と、蛍光免疫染色の両方で共通しているため、同時に行った。この後、先に蛍光免疫染色を行った。

まず、細胞内に抗体が入りやすいように細胞膜に穴を開けるために、0.3%TritonX-100含有PBSに30分間放置し、その後PBSで洗浄(5分間2回)した。次に、抗体の非特異的な吸着を避けるためのブロッキングを行うために、ヤギの血清から作られた溶液(10%normal goat serum,0.3%TritonX-100含有のPBS)をかけて、湿潤箱で30分間放置した。その後、一次抗体反応として、目的とする標識タンパク質と特異的に結合する抗体(抗tyrosine hydroxylase抗体を含有する溶液100㎕)を滴下し、湿潤箱で60分間放置した。ここで昼休みとなった。

休憩後、結合しなかった一次抗体を除去するため、洗浄液(0.3%TritonX-100含有PBS)で2回洗浄を行った。その後、いよいよ二次抗体(蛍光標識物が結合している抗体で、一次抗体と特異的に結合する)反応。二次抗体を100㎕滴下し、湿潤箱に60分間放置。その後、結合しなかった二次抗体を洗浄して、染色作業は終了した。

引き続いて、HE染色の作業を行った。これは、ヘマトキシリンで染色してから、エオジンで染めるもので、ヘマトキシリンが核酸を青く染め、その他の細胞質をエオジンがオレンジに染める。染色が終了してから、各自が自分のスライドガラスを受け取り、封入剤をカバーガラスに一滴滴下し、押し広げながらカバーガラスで覆い、乾燥させる。これで永久標本が完成した。

これまでの作業中の待ち時間には、今回蛍光染色で標的としたtyrosine hydroxylase(TH)が黒質と言われる部分に特異的に作られるタンパク質であること。脳の黒質と言われる部分はでは、メラニンが作られているため、染めずに見ても黒っぽく見えること。またこの黒質のニューロンでは、神経伝達物質のドーパミンが作られており、このドーパミンの減少がパーキンソン病の原因となっているため、パーキンソン病の患者さんでは、黒質が減少していることなどを教えていただいた。そのほかにも、ニューロンの構造や、大脳の層構造などを教えていただいた。

完成した各自の永久プレパラートを用いて、脳の細胞を観察した。脳の中にある血管を見ると、核のない赤血球が見られた。これらはすべてオレンジ色に染まっていた。その中で、青に染まっている血球があり、核の形が丸いリンパ球やいくつかに分かれている好中球を確認することができた。また、蛍光免疫染色を行ったプレパラートを蛍光顕微鏡を用いて観察した。黒質を眺めると、蛍光染色されている細胞だけが観察できた。そしてその形は本当にニューロンの形をしていた。

最後に、MRIについて説明を受け、納入時の価格が1台15億円という装置を見学することができた。この装置は学内で1台だけなので、色々な研究室からの利用予約が殺到しているとのことで、この日も午後3時以降にようやく空きが見つかったそうだ。

永久プレパラートのお土産をいただき、最後に感謝の言葉を述べて、一日実験セミナを終えた。